2008年2月 3日 (日)

「心の肺炎」ねぇ

お風呂の中で、『今さら聞けないCSR:職場の新常識一気読み』という本を読んでいたら、

「うつ病は、心の肺炎のようなものです」

とあった。「心の風邪」というのはよく聞くし、「誰でもかかるものだから、きちんと休んで病院に行きなさい」といううつ状態の人へのポジティブなメッセージとしても使われるのだが、「肺炎」とはなかなか重々しい。

 ネットを探すと、結構「心の肺炎」という表現が多く使われている。どうやら、「風邪と思って甘く見てると大変だよ」という、警句になっているようだ。風邪だと無理がきいちゃうもんね。

 この本は、経営者や管理職に読ませる入門書のようだから、「風邪」なんて書いてしまうと「まだ大丈夫」「もう少しがんばれ」とか勘違いする輩も出るということだろうか。脅かすにこしたことはない。くれぐれも社員の健康管理は怠りなく。

今さら聞けないCSR―職場の新常識一気読み

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2007年3月18日 (日)

城田さち(2007)『ことばの魔法』飯塚書店

 中国にいる間に夜行列車の中で読みました。中国の感想を書く前に、こっちが先にできたから載せましょう。

 城田さんの初めての著書。帯にある「一瞬で心が通じ合う!!」のキャッチコピーに偽りなく、こんな簡単な言葉で心がつながるんだ、と思わされる本です。すいすい読めます。どれも、彼女のさまざまな出会いや体験に基づいて書かれているから、とても実感を持って理解できます。おそらく、著者本人を知らない人でもそうなのではないでしょうか。

 難しい英文や、やたらと凝った言い回しは出てきません。最初の章では、確かに誰でも知ってるけれど、適切に”please”が口から出てくる日本人は少ないかも(かく言う自分もそうですが)と気づかされます。まさに「ことばの魔法」ですね。例文を見ていると、城田さんの「プリーズ」と言っているあの声が聞こえてくるようです。この本をマスターすれば、今後は海外で仕事で疲れた城田さんに迷惑をかけずにすむかしら?

 他にも、以前から、「Can You Speak English?はおかしい」というのは聞かされていましたけれど、その理由が腑に落ちないでいました。でも、この本を読むと、ストンと落ちました。そういえば、NHKの「英語でしゃべらナイト」のタイトルバックはなぜ”Can You Speak English?” なんでしょう。理由を聞いてみたいところです。

 そうそう。英語のところだけじゃなくて、この本はコラム欄も読みどころですよ。本当に通訳者さんはよいパフォーマンスを保つためにとても勉強をされているし、常に深く物事を洞察しているんだなというのが、にじみ出ています。

 いわゆる「英会話ハウツー本」とか「通訳者の楽屋話」というものではないのですが、幸い本屋さんには結構置いてあるようです。1200円+税ですから、値段も手ごろかと。

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2006年11月 1日 (水)

地球の歩き方inバンコク

「地球の歩き方」という本は、何が便利かというと、とりあえず地図が便利。それ以外の中のお店ガイドとか、運賃の額とかは参考にしたことはほとんどない。せいぜい、空港から市内への入り方とか、バスの乗り方ぐらいか。

とにかく、アジアなんか行って、地図を見ようとあの本を街中で広げてしまうと、いろんな人を呼び寄せてしまう。物売り、観光ガイド(自称)、タクシー運転手、謎の親切そうなおじさんなどなど。。。あの、黄色い表紙をどうにかしてくれないだろうか。おそらくあの色に引き寄せられているに相違ない。なんとかしてくれ、編集部。

だから、普段は、地図だけ破いて持ち歩くようにしている。

ところが、この間は油断していて、「歩き方」ごと持ち歩いていた。先々週もバンコクで王宮に行こうとして歩いていたら、交差点でどっちに曲がっていいか分からなくなってしまった。回りに人影もほとんどないし、ふとした気のはずみで「歩き方」をかばんから出したが最後、謎のおっさん登場。

おっさん:Where are you going? (どこいくのさ?)

たちのみや:Grand Palace. (王宮だよ)

おっさん:Palace is not open today! (したっけ、王宮は今日休みだべさ!)

こ、これって、、、歩き方」に乗っている詐欺のケース(バンコク編14ページ)そのまんまやんけ 「歩き方」を開いたらこんなおっさんを誘発してしまった(涙)。とにかく、おっさんを無視して王宮目指して歩いて、無事に王宮に着きました。もちろん、王宮は開いていました。

Democracymonument 民主記念塔。

これが見える交差点でおっさんに捕まった。

Grandpalace 王宮

某読売観光のツアーの後ろに付いていって、こっそりと日本語解説を聞きました。ごめんなさい、某読売観光。だってタイ語わかんないんだもん。

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2006年10月14日 (土)

累犯障害者

山本譲司(2006)『累犯障害者』新潮社を読んだ。

出た当初、割と話題になった本である。自身の服役中の体験から問題意識を得て、罪を重ねていく障害者を丹念に取材して作られている。主に取り上げられているのは知的障害者とろう者の犯罪。

ここで紹介されている事件の中身については、報道はほとんどなされていない。捕まった犯人が障害者とわかったとたんにマスコミは潮が引いたように静まり返る。障害がゆえに犯罪が起きた、という報道がなされれば、その因果関係の不正確さをめぐって抗議があったりするのはわかるが、障害者が犯罪を犯したこと自体についてはタブー視する必要はないのではないだろうか。タブー視するのは、マスコミの側にきちんとした取材をして事件の深層を提示する能力がないからではないかと思わざるを得ない。

いずれの事件も、「コミュニケーションの断絶」が背景にあると著者は論じる。その上で、いくつかの政策上の論点を提示している。

  • 教育。とりわけ手話を否定するろう教育への疑問に代表されるように、コミュニケーションの断絶の要因として浮き彫りになる。
  • 福祉。犯罪を犯す前に有効に介入できていない。そして出所後の受け皿としての機能を果たそうとしない
  • 矯正教育。余裕のない刑務所。障害に関するノウハウも人材もないなかで、犯した罪への「反省」をどう分かってもらうか。

特に出所後の受け皿をどうするかが、Uターンを防ぐ鍵であるかのように書かれている。福祉施設はとりわけトラブルを嫌う。他の入居者・利用者に危害が加わわることを恐れる心理もあるだろう。危害だけでなく、悪影響も与えるから遠ざけたいと思っている福祉職も多い。また、知的障害や精神障害の施設を建設する際に、少なからず地域の反対を受けていることも、「これ以上リスクを背負い込みたくない」という心理を強めているように感じる。

著者はあくまでも刑務所で知り合った人たちを見る視点で書こうとしている。これは大変重要な視点である。福祉の役割も重要なことにも異議はない。しかし、肝心の福祉というものが障害者をどう「処遇」してきたのか。それ自体が問われている。

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2006年9月29日 (金)

やっと宮迫千鶴を読んだ

宮迫千鶴(2001)『美しい庭のように老いる』筑摩書房

 この本は副題にあるように「私の憧れの老女たち」を各章ごとに紹介していくことで、「老い」がポジティブなものであることを伝えようとしている。登場する老女たちは、アメリカ・インディアンであったり、沖縄の人であったり、著名な絵本作家であったりする。宮迫は、彼女達の肩書きやら業績やらといった外向きの立派さから賞賛するのではなく、「ただ現在の自分である人。今という時間の中でゆったりと現在を呼吸し、その今をやがて来る未来へと注意深くつないでいる人」という像を、一冊の写真集や老女の孫との出会いなどを通してつむぎだしていく。「老女」という存在が決して悪いものではないという希望に満ちたメッセージの著である。

 あとがきで、宮迫は「『ふける』ことと『おいる』ことには微妙なちがいがあるように思えた」と指摘している。老けるも、老いるも同じ「老」の字を当てるが、その言葉の持つ意味合いには決定的な違いがある。「老ける」と言う場合には、それを認識する主体は「若かりしころの自分」との対比で現在の自分を見つめ、失われたものを数えている。それに対して、「老いる」というのは共時的に自らを見つめる行為である。そこでは、これまでの人生は、単なる古きよき思い出ではなく、今を生きる自分の糧として蓄積され、残された世代に伝えられるものとして描かれている。

 生命科学者の柳澤桂子は『われわれはなぜ死ぬのか』(草思社、1997)の中で、「私たちは、死を運命づけられてこの世に生まれてきた。……死の運命を背負わされた囚人として生きるのではなく、誇りと希望をもって自分に与えられた時間を燃焼しつくすこともできるはずである」と述べている。宮迫の老女一人一人への憧れも、こうした生死観に近い視座からもたらされたもののように思える。

 脳死や尊厳死など「命の質」がやたらと問われる時代にある中で、医学主導で決められる命のあり方に二人の言説は異を唱えている点で似通っているように映る。宮迫も柳澤も、若干世代は異なるが、70年代から社会に向けて発信を続けた女性たちである。そんな二人が、分野は違えど(画家と生命科学者)老いや死を同じような視点で語っているのが大変興味深い。

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